彼女は神戸の実家を
彼女は神戸の実家を19才の時に飛び出した。好きな男がいたからだ。彼を追いかけ大阪へ出て同棲を始めた。しかし男は半年もしないう ちに姿を消す。代わりにサラリーマン金融の取り立て屋がやって来た。Mは、知らない間に男の保証人になっていた。借金は700万円あった 。Mは仕方なくミナミのクラブでホステスとして働き始める。しかし借金は一向に減らなかった。客の一人が、岐阜の温泉街にあるソープランドで働かないかという話を持ってきた。彼女はそれに乗ることにした。
「でも二十歳の普通の女の子でしょう、抵抗は無かったの?」
と僕は訊いた。「それが私、何をするところなのかも良く判ってなかったんですよ」とMは屈託なく笑った。美しい笑顔だった。「裸でお客さんの身体洗ってあげればいいのかなあ、くらいで。だから『こういうサービスをするんだ』と聞かされてビックリですよね。 天地がひっくり返るかと思った」
しかし、Mはそこで働くことを決心する。それ以外に方法が無かったからだ。彼女には戻る場所がもう無かった。実家とはそりが合わなか った。中学生の頃から何度も家出を繰り返していた。
借金は何と半年ですべて返済した。「鬼のように出勤しましたから」とMはまた笑った。でも仕事は続けた。他に何をしたら良いのか、い や、自分に何が出来るのか皆目見当も付かなかったからだ。
「金銭感覚もむちゃくちゃになっていたしね」
「遊び回っていた?」
「うん、毎晩。朝まで飲み歩いてた」
「やっぱりホストクラブとか?」「そうそう、やっぱりソープ嬢はホストクラブでしょう、みたいな」
Mの年収は軽く二千万円を超えていた。しかしそのすべては、洋服と宝石とホストクラブに消えた。「軽蔑される職業なんですよ。どんなに頑張っても誰も誉めてくれない。お客さんだって何処かで私達を低く見てる。そんな中でホストの 男の子って──まあ、仕事だから内心はどう思ってるか知らないけど──一応話だけはちゃんと聞いてくれるんですよね」 そこだけが人間らしく扱ってくれた。だから通い詰めた。
「でも考えてみたらバカみたいですよね。仕事で散々お金とストレスを溜めて、それを使い切るという繰り返し。相変わらず何処へも行け ない。アクセル全開にして力一杯ブレーキ踏んでるような感じ。何も変わらないんです」ソープラ ンド

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